家具の設置は「装飾」ではなく「販売促進施策」

建売住宅やモデルハウスに家具を設置するかどうか。判断に迷ったとき、多くの場合は「家具代がいくらかかるか」という一点で検討されがちです。しかし実際には、家具の設置は物件の見栄えを整えるための装飾ではなく、内覧数・成約率・販売期間に関わる販売促進施策として位置づけられます。
本記事は、建売事業者・工務店・ホームステージング会社など、物件を販売する側の事業者に向けて、家具を設置することで何が変わるのかを11の観点から整理したものです。購入者向けの「家具付き物件はお得か」という話ではなく、売主・販売会社の立場から見た費用対効果を扱います。
結論を先に示すと、家具設置の効果は次の3点に集約されます。
- 売れやすくする——内覧時の印象と購入意欲を高める
- 早く売る——長期在庫化を防ぎ、広告費・管理費を抑える
- 高く売る——値下げを防ぎ、物件の付加価値を高める
以下、この3点につながる具体的な効果を順に見ていきます。
購入検討者の「見え方」がどう変わるか

まず、内覧に訪れた購入検討者から物件がどう見えるかという観点です。ここは家具設置の効果として最も広く知られている部分でもあります。
①購入後の暮らしを想像しやすくなる
空室の状態では、部屋の広さや使い方を判断しにくいことがあります。家具を置くことで、ダイニングやソファの配置、家族で過ごす場面、生活動線、入居後のインテリアといった具体的な要素をイメージしてもらえます。住宅を単なる「建物」ではなく、暮らしの完成形として見せられることが、家具設置の基本的な価値です。
②内覧時の印象が良くなる
家具のない部屋は、冷たく殺風景に感じられる場合があります。家具・ラグ・小物・照明を配置すると空間に温かみが生まれ、第一印象が変わります。購入の判断は設備や価格だけで決まるものではなく、内覧時にどう感じたかにも左右されます。
③部屋の広さが伝わりやすくなる
何も置かれていない部屋では、家具を置いた後にどれだけのスペースが残るかが分かりません。適切なサイズの家具を置くことで、「4人掛けのテーブルが置ける」「大型ソファを置いても通路が確保できる」「リビングとダイニングを分けて使える」といったことを、言葉ではなく視覚的に伝えられます。
④間取りや空間の使い方を提案できる
変形したLDK、細長い部屋、柱のある部屋などは、購入検討者が家具の配置に迷いやすい空間です。あらかじめ家具を設置しておけば、売主側から最適なレイアウトを提示できます。家具の配置が難しい物件ほど、設置による効果は出やすいと考えられます。
競合物件との差別化になる

建売住宅は、立地・広さ・価格・設備が似通いやすく、購入検討者から見ると各社の違いが分かりにくくなりがちです。同じエリアで複数の物件を比較している検討者にとって、判断材料は限られています。
家具を設置した物件は、写真でも内覧時でも印象が強く残るため、家具のない競合物件との差が生まれます。単純な価格の比較ではなく、暮らし方やインテリアの価値で選ばれる物件にできる、という点が差別化の本質です。
家具は内覧前から効いている——広告写真の見栄え

見落とされやすいのが、家具は内覧時だけでなく集客の段階から効いているという点です。
物件ポータルサイト、チラシ、SNS、自社サイトに掲載する写真は、購入検討者が物件と最初に出会う場所です。家具を設置した状態で撮影すると、掲載写真の完成度が上がり、次のような効果が期待できます。
- 一覧のなかで写真が目に留まりやすくなる
- 物件の雰囲気が伝わりやすくなる
- 閲覧者が入居後の生活をイメージしやすくなる
- 結果として、問い合わせや内覧の申し込みにつながりやすくなる
内覧に来てもらえなければ、物件の良さを説明する機会そのものが生まれません。家具は内覧時の演出装置であると同時に、集客段階で機能する販売促進ツールでもあります。
成約率への影響——業界調査から見る

家具設置の効果については、業界団体による調査結果が公表されています。
一般社団法人日本ホームステージング協会の「ホームステージング白書2024」(第8回ホームステージング実態調査/回答数307)によると、不動産事業者に対する「ホームステージング実施後の反応」の設問(複数回答)では、次の回答が得られています。
| 実施後の反応(複数回答) | 回答割合 |
|---|---|
| 内覧後成約率が上がった | 43.3% |
| 内覧者数が増加した | 31.6% |
| 反響数が増えた | 30.4% |
| 内覧時の滞在時間が長くなった | 19.9% |
| 競合物件と比較されにくくなった | 9.9% |
| 特に変わらない | 8.8% |
「内覧後成約率が上がった」が最も多い回答となっています。注目したいのは、「反響数が増えた」「内覧者数が増加した」がそれぞれ3割前後を占めている点です。これは前の項で述べた、家具が集客段階から効いているという話を裏づける結果といえます。
同調査では、貸主・売主の満足度についても「大幅に満足度が上がった」35.7%、「少し満足度が上がった」48.5%という結果が出ており、あわせて8割を超えています。また、不動産業の63.2%が1年以上継続して実施し、5年以上の継続も22.2%にのぼります。一度試して終わりではなく、営業手法として定着している事業者が一定数いることがうかがえます。
ただし、この数値の読み方には注意が必要です。これは実施した事業者へのアンケートによる自己申告であり、家具を設置した物件と設置しなかった物件を比較した対照調査ではありません。また「特に変わらない」という回答も8.8%あります。したがって「家具を設置すれば成約率が上がる」と断定できるものではなく、効果を実感した事業者が一定割合いるという調査結果として捉えるのが適切です。
家具の設置は、購入検討者の不安や迷いを減らし、購入の判断を後押しする効果が期待できるものであって、成約を保証する施策ではありません。物件の立地・価格・設備といった基本的な条件を覆すものではない、という前提は押さえておく必要があります。
出典:「ホームステージング白書2024」(一般社団法人日本ホームステージング協会)
調査対象期間2024年1月1日〜12月31日/調査実施期間2025年4月14日〜4月30日・5月12日〜5月30日/インターネット調査/回答数307(不動産業171、ホームステージング業他136)
https://homestaging.or.jp/survey/
販売期間の短縮という視点

ここからが、事業者にとって本質的な論点です。
家具によって物件の魅力が伝わりやすくなれば、内覧から成約までの期間を短縮できる可能性があります。
前掲の「ホームステージング白書2024」でも、不動産売買については売却しにくい物件に実施したケースで、成約期間が2か月以内だったものが約70%という結果が報告されています。もともと売れ行きが芳しくなかった物件が対象である点を踏まえると、期間短縮の手段として一定の実績があることがうかがえます。
販売期間が短くなると、売主側には次のようなメリットが生まれます。
- 広告掲載の期間が短くなり、広告費を抑えられる
- 物件の管理費や金利負担を抑えられる
- 長期在庫化を防げる
- 結果として値下げを回避しやすくなる
- 次の物件へ資金を早く回せる
これらはいずれも、家具代とは別の勘定で発生しているコストです。家具を入れるかどうかを検討する際、家具代だけを単独で見ると「余計な出費」に見えます。しかし本来比較すべき相手は、販売期間が延びた場合に積み上がっていく保有コストです。
家具代を「かかる費用」としてではなく、販売期間を短縮するための販促費として捉えられるかどうかが、判断の分かれ目になります。
家具代は「コスト」ではなく「値下げ回避のための費用」

販売期間の話をさらに突き詰めると、値下げとの比較にたどり着きます。
長期間売れない建売住宅では、最終的に販売価格の見直しを迫られることがあります。そして値下げの幅は、家具代を大きく上回る規模になることが少なくありません。
一方、LDK一式の家具であれば、価格帯にもよりますがよくある事例として多いのが20万円前後〜40万円前後で、高価格帯の商品にこだわらなければ現実的な範囲で構成できます。値下げ幅と家具代を並べて比較したとき、家具代が値下げ幅を下回るのであれば、先に家具を設置して早期成約を狙う方が、結果として利益を確保しやすくなります。
この観点を踏まえると、住宅会社への提案の仕方も変わります。
- ❌ 家具代がいくらかかるか、という説明だけで終わる
- ⭕ 値下げや長期在庫化をどれだけ防げるか、という視点をあわせて示す
もちろん、家具を設置すれば必ず値下げを回避できるわけではありません。物件の立地や価格設定に課題がある場合、家具だけで販売状況が変わることはありません。あくまで「売れる条件は揃っているが、決め手に欠ける物件」に対して効果を発揮する施策として位置づけるのが適切です。
家具付きで販売する場合、購入者にどんな価値があるか

設置した家具をそのまま付けて販売する、という選択肢もあります。内覧に訪れた購入検討者から「この家具も一緒に譲ってほしい」という要望が出ることがあり、建売住宅の販売現場では、こうした要望を受けて家具も含めた提案を行うケースがあります。
購入者から見た価値は次のとおりです。
- 入居時に家具を買い揃える必要がない
- 家具選びの手間が省ける
- 部屋に合うサイズを選び直す失敗がない
- 入居後すぐに生活を始められる
- 家具を個別に買い揃える場合と比べ、入居時の出費を抑えやすい
- 家具を含めた総額で住宅ローンを申し込む進め方が取られるケースがあり、その場合は家具の費用を住宅ローンと同じ返済期間で分割できる
特に、子育て世帯・共働き世帯・初めて住宅を購入する層にとっては、分かりやすい価値になります。入居準備にかけられる時間が限られている層ほど、この提案は響きやすくなります。
売主側から見ると、展示のために用意した家具がそのまま販売収益につながることを意味します。家具費用を「販売が終われば残らない展示コスト」ではなく、「物件とともに販売できる在庫」として捉え直せる点が、事業計画上の違いになります。
住宅会社のブランドイメージが向上する

もう一つ、数値化しにくいものの見過ごせない効果があります。
統一感のある家具を設置すると、住宅会社の提案力やデザイン力が伝わります。単に住宅を建てる会社ではなく、入居後の暮らしまで提案できる会社という印象を持ってもらえるようになります。
これはモデルハウスや完成見学会での接客品質にも関わります。家具のある空間では、営業担当者が「この配置ならこう使えます」といった具体的な会話を展開しやすくなり、説明の説得力が変わります。空室で間取り図を見せながら説明するのとでは、伝わり方が大きく異なります。
住宅会社への提案は3点に集約する

ここまで見てきた効果を、実際に住宅会社へ提案する場面で使う場合は、次の3点に集約すると伝わりやすくなります。
| 提案の柱 | 訴求する内容 |
|---|---|
| ①売れやすくする | 内覧時の印象と購入意欲を高める。掲載写真の完成度を上げ、内覧の申し込み自体を増やす |
| ②早く売る | 長期在庫化を防ぎ、広告費・管理費・金利負担を抑える |
| ③高く売る | 値下げを防ぎ、物件の付加価値を高める。家具ごと販売する選択肢も残る |
家具代の話から入るのではなく、この3点から入ることで、家具設置が費用ではなく販売戦略の一部であることが伝わります。
よくある質問(FAQ)

Q1. 家具を設置すると、どのくらい早く売れるようになりますか?
A. 物件の立地・価格・競合状況によって異なるため、期間を断定することはできません。業界団体の調査では、内覧後成約率が上がったと回答した事業者が43.3%(複数回答)という結果が出ていますが、これは自己申告によるアンケート結果です。家具の設置は購入判断を後押しする施策であり、成約を保証するものではないという前提でご検討ください。
Q2. 家具代はどのくらいの予算を見ておけばよいですか?
A. 選ぶ家具の価格帯によって変わります。LDK一式であれば、よくある事例として多いのが20万円前後〜40万円前後で、高価格帯の商品にこだわらなければ現実的な範囲で構成できます。ご予算をお知らせいただければ、その範囲内でご提案いたします。
Q3. 売れ残った場合、設置した家具はどうなりますか?
A. 次の物件へ転用いただくことが可能です。状態のよい家具であれば繰り返し使えるため、1物件あたりの負担は複数物件で使うほど下がっていきます。
Q4. 家具付きで販売する場合、家具の価格は物件価格に含めるのですか?
A. 契約の形態によって異なり、物件価格に含める場合と別途見積もりとする場合があります。どちらの進め方を取るかは、取引の内容や金融機関との調整によって変わるため、具体的な取り扱いは各社でご確認ください。
Q5. 分譲地の全棟に家具を入れる必要がありますか?
A. 必須ではありません。分譲地内の1棟にのみ家具を設置し、その棟を案内の起点にする進め方もあります。同一分譲地内の複数棟へ同時に納品した実績もございますので、棟数やご予算に応じてご相談ください。
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モデルハウス・モデルルーム向けの家具調達については、モデルハウス・モデルルーム向け家具の一括調達をご覧ください。
まとめ

建売住宅・モデルハウスへの家具設置は、単なる装飾ではありません。物件の魅力を分かりやすくし、購入検討者の不安を減らし、内覧・成約・早期販売につなげる販売促進施策として位置づけられます。本記事のポイントを整理します。
- 家具は内覧時だけでなく、掲載写真を通じて集客の段階から効いている
- 家具代は単体で見ず、販売期間が延びた場合の保有コストや値下げ幅と比較して判断する
- LDK一式であれば、よくある事例として多いのが20万円前後〜40万円前後。値下げ幅を下回るなら早期成約を狙う方が有利になりやすい
- 設置した家具は次の物件へ転用でき、家具ごと販売する選択肢も残る
- 住宅会社への提案は「売れやすくする・早く売る・高く売る」の3点に集約すると伝わりやすい
大川家具は昭和28年の創業から73年、家具の総合卸売業として国内外154社以上のメーカーと取引してきた会社です。これまでにモデルハウス・住宅展示場を中心に300件以上の家具納品実績があり、取引を開始いただいたお客様のリピート発注率は90%以上となっています。大阪本社・東京事業部・大川事業部(福岡)の3拠点体制で全国に対応しております。
物件数・ご予算・スタイル・希望納期をお知らせいただくと、スムーズにご案内できます。
※本記事に記載の費用・納期に関する情報は一般的な目安です。実際の内容は仕様・搬入条件・時期・発注数量によって異なります。正確な内容は必ずお見積もりをご取得ください。
※住宅ローンの取り扱いは金融機関・ローン商品によって異なります。家具を含めた借り入れの可否については、各金融機関にご確認ください。
※本記事で引用した調査結果の出典は「ホームステージング白書2024」(一般社団法人日本ホームステージング協会)です。同調査は実施事業者への自己申告によるインターネット調査であり、家具設置の効果を保証するものではありません。